ルーズソックスの歴史は、シンプルではない。ルーズソックスの起源として、仙台説水戸説渋谷説ブロンドール説EGスミス説登山用ソックス説があるが、全てが誤情報になる。



ヨーロッパの出来事

1946年5月30日オランダのサッカー選手がハイソックスを下げて皺くちゃにしていた。ふくらはぎの圧迫を気にしたか、蒸れを気にした可能性がある。
メモ 1940年イギリスの女子陸上選手がソックスを下げて皺くちゃにしていた。


さらに昭和時代のサッカーのハイソックスは、競技中にずり落ちがあった。

これらは、ファッションや表現とは言えない。


アメリカの出来事

ハイソックスを下げて皺くちゃにする表現は、アメリカが発祥地になる。


1967年12月1977年、プロバスケットボールのニューヨーク・ニックスに所属していたビル・ブラッドリーは、ハイソックスを皺くちゃにして出場していた。ショートソックスは着けなかった為、スポーツ選手特有の験担ぎをした可能性がある。
メモ 1964年、ビル・ブラッドリーは東京オリンピックでもハイソックスを皺くちゃにして出場した。
メモ 1970年、ニューヨーク市の公園の様子。ビル・ブラッドリーを真似て、ソックスを皺くちゃにした可能性がある。


1980年5月16日、ニューヨーク市を舞台にした映画フェームが公開された。皺くちゃにしたレッグウォーマーを着けていた。
メモ 日本では1980年12月13日に公開された。
メモ ニューヨーク市は、冬に氷点下になる。


映画フェームのダンスを練習する場面にて、出演者2名のレッグウォーマーにずり落ちがあった。レッグウォーマーのゴムが弱いことが原因で、皺くちゃにしたスタイルが定着した可能性がある。

日本のファッション雑誌non-no 1980年6月20日号にて、皺くちゃにしたソックスを着けたカリフォルニア州の女性が掲載された。


1979年以降、爪先と踵が露出したソックスタイプのレッグウォーマーがエアロビックエクササイズ等で用いられた。このタイプは、現在も各メーカーから販売されている。
メモ ジェーン・フォンダのワークアウトは1982年に発売されたが、写真は1981年に撮影された。

1983年4月15日、映画フラッシュダンスが公開された。皺くちゃにしたレッグウォーマーを着けていた。

1984年7月31日、JACKSONS WORLD TOUR '84が開催された。マイケル・ジャクソンが皺くちゃにしたソックスを着けていた。
メモ THORLOの製品をカスタマイズしたらしい。

1986年L.A.GEARの広告にて皺にしたソックスを着けていた。
メモ 1987年、L.A.GEARの広告コマーシャル
メモ L.A.GEARのシューズは、日本でも販売された。

1988年12月21日、ニューヨーク市を舞台にした映画ワーキング・ガールが公開された。ストッキングの上に皺にしたソックスを着けていた。
メモ 日本では1989年5月20日に公開された。

アパレルメーカーの各社は、皺にしたソックスに「SLOUCH SOCKS」という言葉を用いていた。この点からアパレルに関連した出版物にてSLOUCH SOCKSという言葉が用いられて、定着した可能性がある。
メモ 皺くちゃに見えるように編み方を工夫した品もあった。

1994年9月14日、ニューヨーク市を舞台にした映画レオンが公開された。皺くちゃにしたソックスを着けていた。


日本の出来事

1980年12月13日、ニューヨーク市を舞台にした映画フェームが日本にて公開された。


日本のスタイリストは、ニューヨーク市のファッションに反応していた。 1981年以降、ファッション誌やアイドル誌にて皺くちゃにしたソックスとレッグウォーマーが掲載された。
メモ 1982年5月に渋谷にて撮影された女性と1984年3月に新宿にて撮影された女性は、ananを読んでいた。

1983年7月30日、映画フラッシュダンスが公開された。ダンス教室やエアロビクス教室に通っていた女性たちの間で、皺くちゃにしたレッグウォーマーが流行した。

1987年9月12日、MICHAEL JACKSON JAPAN TOUR '87が開催されて、同年10月に日本テレビにて独占特番!マイケル・ジャクソン1440時間の全記録が放送された。前述のJACKSONS WORLD TOUR '84と同様に、皺くちゃにしたソックスを着けていた。 皺にしたソックスが大衆に広まり始めたのは、1989年だった。雑誌にて掲載されたコーディネートを参考にして、あるいは1989年5月20日に公開された映画ワーキング・ガールを参考にして、ソックスを皺にした可能性がある。
メモ 映画ワーキング・ガールは、渋谷では渋谷パレス座にて上映された。
メモ 1988年~1989年頃、ソニープラザにてSLOUCH SOCKSとして用いることに適したCITY SOCKSが販売された。PLAZAを運営しているスタイリングライフ・ホールディングスに問い合わせて、CITY SOCKSを販売開始した年月日についての記録は残っていないとの返答を得た。


プチセブン1991年10月15日号の「私服校の登校スタイル」ページにて、皺にしたソックスに「ルーズソックス」という言葉が用いられた。さらに「アメカジテースト」と記載されていて、アメリカのファッションをプチセブンの編集部は把握していたことが分かる。
メモ プチセブン1991年10月15日号の「私服校の登校スタイル」ページにて掲載された青山学院高等部と、恵泉女学園高等学校
メモ プチセブンは小学館から発行された隔週刊の雑誌で、1990年代は女子高校生を対象にしたファッション情報をメインにしていた。


プチセブン1992年5月1日号の「いつもはいてる高校生のくつ下」ページにて、皺にしたソックスに「クシュクシュ」「ルーズソックス」という言葉が用いられた。
メモ ソニープラザにて販売されたルーズソックスのメーカーは、分からない。1992年、ソニープラザにてE.G.SMITHの34cm丈が販売されたが、プチセブンにて掲載された品はHANESに近い雰囲気がある。


プチセブン1992年6月1日号の「女子高生が3つの服を持って集合ぉ~!」ページにて、皺にしたソックスに「ルーズソックス」という言葉が用いられた。
メモ プチセブン1992年6月1日号にて掲載されたルーズソックスは、プチセブン1992年5月1日号にて掲載されたルーズソックスと同じ品に見える。
メモ プチセブン1992年6月1日号にて、岐阜女子高等学校バスケットボール部のユニフォーム姿が掲載された。ミズノのRUNBIRDのソックスが皺くちゃになっていて、DELUXEマガジンORE 1989年7月号と同じ状態になっている。


プチセブン1992年9月15日号にて、短めなソックスに「くしゅくしゅ」「くしゅくしゅソックス」という言葉が用いられた。
メモ プチセブン1992年12月1日号にて、ルーズソックスに見えるイラストに「くしゅくしゅソックス」という言葉が用いられた。そしてプチセブン1996年4月15日号にて、E.G.SMITHの34cm丈または45cm丈に「クシュクシュソックス」という言葉が用いられた。プチセブンの編集部は「ルーズソックス」と「クシュクシュソックス」を定義付けしていなかったように見える。
メモ プチセブン1992年9月15日号にて、制服のスカートの丈を短くする方法が掲載された。


プチセブン1993年7月1日号の「海外から輸入したばかりのソニープラザの新商品」ページにて、SLOUCH SOCKS=クシュクシュソックスとして用いることに適したCITY SOCKSが掲載された。
メモ 1993年12月に渋谷にて撮影された女子高校生は、ハイソックスが皺になっていた。さらにセーラーメイトDX.1994年1月号にて女子高校生の写真が掲載されて、ハイソックスが皺になっていた。
メモ 1994年7月に渋谷にて撮影された女子高校生は、皺にしたハイソックスにルーズソックスという言葉を用いた。さらにソックタッチの代わりに両面テープを用いた点から、プチセブン1993年7月1日号を読んだ可能性がある。


1994年の後半期、厚手のハイソックスのレッグ部のゴムを抜いた、新種のルーズソックスが派生した。プチセブン1994年11月1日号にて、ゴムを抜くカスタマイズが女子高校生の間で広まっていることが掲載された。

1995年12月、マキシムから既製品としては初のゴム無しのルーズソックスが発売された。
メモ ゴム無しのルーズソックスとは、レッグ部にゴムを用いていないツチノコ型のルーズソックスを意味する。


プチセブン1996年4月15日号の「新学期いきなし制服アレンジで一歩リード!」ページにて、女子高校生の制服姿が掲載された。相模女子大学高等部以外の17校は、ルーズソックスを着けていた。
メモ 1996年6月1996年10月1996年12月に撮影された女子高校生。
メモ プチセブン1996年9月1日号にて掲載されたセイコーコンタクトレンズの広告


プチセブン1997年9月15日号にて、1997年9月1日にウイックスから発売されたE.G.SMITHの75cm丈が掲載された。以降、ルーズソックスの皺のボリュームはエスカレートした。


プチセブン1999年7月1日号の「おしゃれなコはこれ着てた! 東京・大阪 夏のパワフルスナップ」ページにて、レッグウォーマーを着けた9人の女子が掲載された。プチセブン1999年4月15日号にて掲載された記事が影響を与えた可能性がある。


プチセブン2000年5月15日号にて専属モデル6名の通学姿が掲載されて、5名はルーズソックスを着けていた。
メモ 阿部真理奈=阿部まりなが通っていた日本大学藤沢高等学校は、ルーズソックスを禁止していた。ただし当時の校則には、ルーズソックスの件は記載されていなかった。


プチセブン2001年4月1日号にて、プチセブンの編集部が渋谷にて取材した記事が掲載された。ルーズソックスを着けた女子高校生に聞き取りして、6割が穴あきだったことが明かされた。
メモ ルーズソックスは、学校によっては教室内カーストの中位以上が着けていた。山口県の高等学校の例福岡県の中学校の例

2015年3月28日、江戸東京博物館の常設展示室にてルーズソックスが展示された。


ルーズソックスに関する怪しい話 1

週刊テレビゲーマー1997年4月4日号のルーズソックスを特集した記事にて、ルーズソックスの発案者としてE.G.SMITHの社長が紹介された。


さらに信越放送2017年3月6日の記事、スポーツ報知2018年6月16日の記事、日本経済新聞2018年12月15日の記事にて、ルーズソックスの発案者としてブロンドールの元社長が紹介された。
メモ ブロンドールはSAGGINS'というブランド名で、SLOUCH SOCKSとして用いることに適したソックスと、ルーズソックスとして用いることに適したハイソックスを販売した。
メモ 生みの親という言葉は、物事を最初に始めた人、最初に作り出した人を意味する。


流行通信1982年3月号にて、皺くちゃにした厚地のソックスが掲載された。E.G.SMITHのBOOT SOCKは1983年に発売されて、ブロンドールのSAGGINS'は1989年に発売された為、2社とも後発になる。


さらにルーズソックスの源流は、ソックスタイプのレッグウォーマーになる。1981年には、ルーズソックスのスタイルはほぼ完成していた。


ルーズソックスに関する怪しい話 2

ルーズソックスと登山を結び付けた全ての言説は、誤情報になる。 どれも、似た文言になっている。


誤情報の起点は、前述の週刊テレビゲーマー1997年4月4日号になる。E.G.SMITH社員の言説は、参考にしてはならない。
メモ 週刊テレビゲーマーの編集部がE.G.SMITH社員の返答を翻訳した時に、ミスした可能性もある。 BOOT SOCKSBOOT SOCKBOOT SOXは、アウトドアライフ用の防寒ソックスとして販売された品が多い。


ルーズソックスに関する怪しい話 3

2016年1月に閉店した宮城県仙台市の大内屋が、ルーズソックスの発祥地は大内屋との主張をしていた。1992年~1993年頃に女子高校生がワンポイント刺繍がある男性用ソックスを大内屋にて購入して、ユルユルな状態で着けていたのが周囲にウケて広まったとのこと。
メモ せんだいメディアテークのウェブサイトにて、情報が掲載された。初出は1996年9月30日に放送されたNHK総合のクローズアップ現代らしい。


プチセブン1992年5月1日号の「いつもはいてる高校生のくつ下」ページにて、ラルフローレンの男性用ソックスを用いれば皺が多くなるとの情報が掲載された。


大内屋にて男性用ソックスを購入した女子高校生は、プチセブン1992年5月1日号を読んだ可能性がある。さらにインターネットが無い時代に無名の女子高校生がファッションスタイルを広めた可能性は低く、他の女子高校生もプチセブン1992年5月1日号またはプチセブン1993年7月1日号を読んで、男性用ソックスを購入した可能性がある。
メモ 1993年10月20日に発行された別冊MyBirthdayスクールおしゃれにて、「メンズソックスが流行中。クシュクシュがうまく出るの」と記載されている。
メモ 当時仙台の女子高校に通い、プチセブンを読んでいなかった人の視点
メモ 1996年、大内屋Oh ! LaLa一番町店の様子

2018年9月に閉店した茨城県水戸市の丸井水戸店が「ルーズソックスの発祥は丸井!」との主張をしていた。仙台の大内屋発祥説と同様に無効になる。


ルーズソックスに関する怪しい話 4

自由国民社が主催した1996年の新語・流行語大賞にて、ブロンドールの社長がルーズソックスという言葉で受賞した。その後、スポーツ報知2018年6月16日の記事にて元社長は、当時の女子高校生がルーズソックスという言葉を用いていたことを明かした。

しかしルーズソックスという言葉は、ルーズソックスが流行する前からあった。1982年に発行された朝日中学生ウイークリーにて「ルーズソックス」という言葉が用いられた点から、アパレルに関連した出版物にて、ルーズソックスという言葉が用いられた可能性がある。
メモ マイアニメ1984年3月号付録の重戦機エルガイム設定資料集にて、「ルーズソックス」という言葉が用いられた。
メモ anan ELLE JAPON 1981年6月11日号にて、「ルーズ」という言葉が用いられた。

ブロンドールの社長がルーズソックスという言葉で受賞した理由を自由国民社に問い合わせると、対象にした言葉に深く関わった人や団体を表彰することを目的にしていて、言葉の発案者や初出媒体等に限らない、との返答を得た。


ルーズソックスに関する怪しい話 5

2021年10月5日、日本テレビにてnews every.が放送された。ルーズソックスを特集した報道にて、制服だけではなく私服にも合わせられていた点が令和の特徴と言説されたが、誤報になる。平成の時も、夏以外は私服にルーズソックスは合わせられていた。
メモ プチセブン各号渋谷1996年7月週刊テレビゲーマー1997年4月4日号大阪市住吉区2001年1月大阪市住吉区2001年1月大阪市住吉区2002年1月読売新聞2014年10月22日夕刊
メモ news every.の誤報は、FASHIONSNAP.COMの2021年12月8日の記事と、2022年3月13日にテレビ愛知にて放送されたデータで解析!サンデージャーナルに拡散した。


ルーズソックスに関する怪しい話 6

平成の女子高校生がルーズソックスを着けた理由は、「脚が細く見えるから」「かわいいから」だった。

しかしルーズソックスは膝から下の防寒性を得る代償として、脚の太さや長さが平均的な女子が着けると脚が少し太く見える特徴がある。「脚が細く見えるから」については、集団心理が働いて冷静な判断ができなくなっていた可能性がある。


ルーズソックスを着けた女子の脚が本当に細く見えた場合は、その女子の脚が元から細くて西洋人並みに長かったことになる。