福井地方裁判所 令和5年(ワ)273 2025年4月16日 利用料を自治会費と同等程度にすることは認めず

福井市にて起きた自治会と非加入者のゴミ集積所をめぐる争いは、地元の福井新聞によって報じられた。
  1. 福井新聞 2024年1月30日:争いは民事調停では解決せず、地方裁判所に持ち込まれた。
  2. 福井新聞 2025年4月17日:地方裁判所は、非加入者が年15,000円の利用料を支払えばゴミ集積所を利用できるとする判決を下したが、損害賠償の請求は棄却した。
    メモ 自治会は、空き家の所有者に自治会費として年22,000円を請求していて、この件ではゴミ集積所の利用料として年24,000円を提示していた。
    メモ 自治会が所有する土地にゴミ集積所がある場合でも、非加入者が利用料を支払えば利用できるとする高等裁判所の判例がある。
  3. 福井新聞 2025年5月13日:非加入者は年15,000円の利用料を不服として控訴した。
  4. 福井新聞 2025年10月29日:10月28日に和解が成立して、裁判は終了した。
福井新聞は池田暮らしの七か条を報じた際に自治会問題を取り上げなかったが、この件でも自治会の敷地にゴミ集積所があることを取り上げなかったため、事件の本質が大衆に正しく伝わらず、誤った理解が広まってしまった。 ゴミ集積所が公道や公園など、市町村が管理する土地に設置されている場合には、この判例は適用されない。自治会がゴミ集積所の設置に費用を負担していても、非加入者が市町村の許可を得てゴミ集積所の傍にゴミを置く場合は、利用料は発生しない。
メモ 清掃当番については、その他の留意事項を参照。


問題となった自治会館、布施田開発センターは福井市布施田町にある。2つのゴミ集積所は公道沿いにあるため、非加入者がゴミを側溝上に置くことを福井市役所から許可を得れば、裁判に至らずに問題を解決できた。ただし、この道路を管理しているのは福井県庁の出先機関となる福井農林総合事務所の農村整備部計画管理課のため、ゴミを側溝上に置く場合は福井農林総合事務所からも許可を得る必要がある。
メモ この区域では、かつて大規模な道路整備が行われた。旧自治会館は隣接する公園内に建て替えられて、旧自治会館の跡地は県道10号につながる農業専用道路となった。

福井市ごみ集積所の設置等に関する要綱 第3条の第1項
ステーションの新設、変更及び廃止を行いたい自治会長は、申請書を市長に提出するものとする。この場合において、新設を行いたい自治会長は、近隣ステーションとの併用を検討するものとする。

ところで、福井市役所の施策にも問題がある。福井市役所は、戸建て住宅地のゴミ集積所の運営に自治会を組み込んでいて、自治会側の視点から見ると、ゴミ集積所は自治会加入者専用と位置づけられる。こうした構造は、今後も自治会と非加入者の対立を生じさせる要因となるため、福井市ごみ集積所の設置等に関する要綱から、自治会に関する記載を削除する必要がある。
メモ 地方自治法第260条の2 第6項において、自治会を市町村の組織とみなしてはならないことが定められている。