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自治会は入会や退会が自由な団体

自治会は強制加入団体ではなく、自治会に脱退を告げた者は自治会費は支払わなくて良いとした判決が最高裁判所にてあった。埼玉県新座市本多1丁目、県営新座本多第二団地のけやき自治会にて発生したトラブルの最終判決だった。

自治会費等請求事件 最高裁判所 平成16(受)1742 2005年4月26日 共益費の件以外は自治会が敗訴

自治会の入会と退会について整理すると、下記のようになる。
  1. 自治会は、加入していない者に対して、加入を強制できない。
  2. 加入していない者は、自治会費を支払う必要はない。そして脱退を告げた者は、指定日から自治会費は支払わなくて良い。
  3. 自治会が会員の脱退を認めない方針にしていても、代表者に退会日を告げていれば、指定日から退会になる。ただし規約にて脱退を制限する何かが定めてあり、契約している場合は、退会時期が少し先になることもありえる。
さらに自治会は、権利能力無き社団として定義されている。権利能力無き社団を自治会に当てはめると、下記のようになる。
  • 住⺠が自主的に運営する組織で、住民によるサークル活動やクラブ活動とも言える。
  • 規約を設け、運営方針を多数決で決めることができる。
  • 市町村の下部組織ではなく、またその地域の運営方針を決める権限は持たない。
上記の補足は、下記のようになる。
  • 住民による任意団体なので基本的に何をやっても良いが、専用の集会所を保有している関係で地縁による団体にしている場合は、地方自治法第260条の2の制約がある。
  • 法律で定められたことは、多数決で決めることではない。
  • 自治会からの脱退はできないとする強い定めにする場合は、必ず期間を指定して、契約毎に全戸に捺印を求める必要がある。
自治会に加入しなければならないとする条例を定めた市町村は、その条例を削除しなければならない。条例は下位の法で、効力は無い。
メモ 欧米は自治会を行う習慣は無く、日本にも自治会が無い地域がある。自治会が無いことで、住民の暮らしが困ることはない。


自治会費という名称のみかじめ料

自治会に加入していない者に対して、自治会の会長が執拗に自治会への加入と自治会費の支払いを求めたことが不法行為に当たるとして賠償を命じた判決が福岡高等裁判所にてあった。

地位不存在確認等請求控訴事件 福岡高等裁判所 平成25(ネ)927 2014年2月18日 自治会が敗訴

自治会が暴力団的になる例は全国にあり、市町村が自治会を下部組織のように扱うことが原因の1つとしてある。市町村は、自治会に加入していない者を基準にして運営しなければならない。
メモ 自治会費を強制徴収するトラブルは、裕福とは言えない層が居住する集合住宅にて発生する傾向がある。


全国のマンションの管理組合に対して国が勧告

集合住宅の管理規約にて、自治会に加入して自治会費を支払う事柄が記してあるとトラブルになりやすい。
  1. 管理組合の管理規約に、自治会に加入して自治会費を支払う定めを加えることを総会の多数決で議決する。
  2. 自治会に加入することを拒否した者を自治会に強制加入させて、銀行口座から管理費と一緒に自治会費も引き落としてしまう。
  3. 自治会の口座に、年間で大金が入金される。
国はこうした行為は問題視していて、2016年に全国の集合住宅の管理組合に対して注意事項を発した。単棟型も複合用途型も、同じ内容になっている。
国土交通省 標準管理規約及び同コメント
ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。
イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。
ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。
関連する裁判例がある。

管理費の一部債務不存在確認等請求控訴事件 東京高等裁判所 平成19(ネ)800 2007年9月20日 理事会が敗訴

神奈川県川崎市高津区久本3丁目、パークシティ溝の口にて発生したトラブルだった。パークシティ溝の口自治会から脱退することを告げた者に対して、管理組合の理事会が自治会費を銀行口座から強制徴収したことが違法と判断された。
メモ 自治会から脱退することを告げた者から自治会費を強制徴収した為、自治会内では退会を認めていなかったことになる。
メモ この集合住宅の管理組合の役員は、全員が自治会の会員だった。この点から、自治会が管理組合をコントロールしていたとも解釈できる。
メモ 管理組合には、役員の行動をチェックする監事がいる。しかし監事も自治会の会員が就いている場合は、こうした時に機能しないことが考えられる。
メモ 理事会が敗訴後、自治会から脱退した者は1名増えて計3名になった。しかしその後の10年間は、引っ越しを除いて脱退した者はいなかった。理事会は、敗訴したことを議事録には記さなかったことが考えられる。

管理組合による自治会費の強制徴収が違法と判断された裁判は、他にもある。
  • 2009年の東京高等裁判所 平成21年3月10日判決では、自治会に加入することを拒否した者に対して、管理組合の理事会が自治会費を強制徴収したことが違法と判断された。
  • 2016年の東京高等裁判所 平成28年7月20日判決は、ややこしい。管理組合が自治会を兼ねていて、自治防災費というトリッキーな呼称で自治会費を全戸から強制徴収していた。強制徴収に反対した者との裁判になり、結果、管理組合が自治会を兼ねていても自治会から脱退はできると判断された。そして自治会費の呼称を変えても、退会日以降の支払い義務は無いと判断された。
  • 2019年の大阪地方裁判所 令和1年8月6日判決では、自治会に加入することを拒否した者に対して、管理組合の理事会が自治会費を強制徴収したことが違法と判断された。
その他、2006年の東京簡易裁判所 平成18(ハ)20200にて、管理規約の定めは拘束力は無いとして、未払いの自治会費は支払う必要は無いと判断された。

弁護士を利用せずに訴えを起こして、主張をミスした為に管理組合の理事会が勝訴してしまった裁判例がある。

理事会決議無効確認請求控訴事件 東京高等裁判所 平成24(ネ)1024 2012年5月24日 控訴を棄却 理事会が勝訴

管理組合の総会にて、管理費から自治会費を支出することが議決されて、その決議に反対した者との裁判になった。反対した者は総会の決議の有効性を訴えてしまい、敗訴になった。控訴審から弁護士が加わったが主張の変更は出来ず、控訴は棄却された。自治会に加入することを拒否した者に対して、管理組合の理事会が自治会費を強制徴収したことの訴えではない為、奇妙な判決になった。
メモ 判決文にて「控訴人が引用する最高裁判決は団地の住人によって構成される自治会との関係において、自治会に対し退会の意思表示した者に対する自治会費等の請求の当否が直接問題とされたものであって、本件と事例を異にし、同判決によって上記結論が左右されるものではない」とあり、自治会からの脱退や自治会費の強制徴収とは関連しない裁判であることが記してある。
メモ 判決は他の裁判例とは微妙に合わない部分があり、2016年に改定されたマンション標準管理規約とも合わない部分がある。もしかしたら、現在は有効性は薄いかもしれない。
メモ 訴えを起こす場合は、自治会費の返金を求める必勝パターンから外さないほうが良い。

各裁判を整理すると、下記のようになる。
  1. 管理組合の管理規約にて、自治会に加入して自治会費を支払う事柄を記すことは認められる。
  2. ただし自治会に加入することを拒否した者と、自治会から脱退することを告げた者に対して、管理組合が自治会費を強制徴収すると違法になる。
  3. 管理組合と自治会が、自治会からの脱退を認めない方針にしていても、各代表者に退会日を告げていれば、指定日から退会になる。
自治会から脱退することを管理組合の理事会と自治会の会長に告げるのは、退会日の6か月前から1年前が良い。もし管理組合の理事会が退会日以降も自治会費を銀行口座から引き落とす方針の場合は、下記の方法で対処する。
  1. 管理組合から業務を委託されている管理会社に対して、退会日以降は自治会費の引き落としをしないようEメールで求める。管理会社が承諾すれば、解決になる。
  2. 管理会社が退会日以降も自治会費を引き落とす方針の場合は、退会日以降に自治会費が数か月分引き落とされたことを確認後、取引銀行に連絡して管理会社を除外する。引き落としの中止後は、自治会費を除いた管理費等を管理会社の銀行口座に毎月送金する。楽天銀行にて口座を開設して10万円以上を入金しておけば、毎月1回分の送金手数料は無料になる。
  3. 下記のインターネット人権相談を利用する。
退会日以降に銀行口座から自治会費が数か月分引き落とされた記録は違法行為の証拠になり、インターネット人権相談や裁判にて使える。


裁判をせずにトラブルを解決する方法

裁判例はおおよそ揃った為、法務省のインターネット人権相談が利用できるようになった。管轄の法務局に状況を説明して、法務局が調査して人権侵害行為があったことを認定すれば、自治会や集合住宅の管理組合に対して勧告が行われる。
メモ 集合住宅の管理組合の理事会と、自治会の会長が、自治会からの脱退は認めなかった行為に対して、法務局が人権侵犯を認定した事例があった。

インターネット人権相談を利用する場合は、事前に資料を用意してコピーしておく。
メモ 法務局に送付した資料は戻らない。
  • 自治会からの文書。
  • 自治会の規約の該当ページと表紙。確認できない場合は無くても良い。
  • 集合住宅の理事会からの文書と関連する議事録。該当箇所に付箋する。
  • 集合住宅の管理規約の該当ページと表紙。該当箇所に付箋する。
  • 退会日以降に、銀行口座から自治会費が数か月分引き落とされた記録。集合住宅の場合は、これを得てからインターネット人権相談を利用する。
  • 脅迫や嫌がらせがあった場合は、画像や音声記録。
  • このページを印刷したもの。
法務局の担当者がパソコンを利用している場合は、追加の資料を随時Eメールで送付することもできる。


戸建住宅のごみ集積所問題

ごみの回収は市町村の義務であり、市税を支払っているならばごみを出すことができる。
メモ 戸建住宅で構成されている地域にて、自治会に加入していない者がごみ集積所を利用できない例がある。詳しくは後述。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第二章 一般廃棄物
第一節 一般廃棄物の処理
(市町村の処理等)
第六条の二

市町村は、一般廃棄物処理計画に従つて、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない。
市町村は、数戸のまとまりがあれば1つのごみ集積所の設置を許可していて、自治会は絡ませていない。ごみ集積所は自治会が運営するのではなく、数戸のまとまりにあるグループ内で協力して運営するのが本来の方法となる。

自治会に加入していない者は、ごみ出しの方法を解決しなければならない。
  • ごみ出しの方法について市役所の担当課に問い合わせる場合は、電話よりもEメールが良い。上記の廃棄物の処理及び清掃に関する法律と、裁判例を記しておけば、「ごみ集積所は自治会が管理していますので、自治会に加入ください。それ以外のごみ出しの方法はありません。」という無知な返答を防ぐことができる。もし担当者に問題を解決する能力が無い場合、担当者が独断で判断していると考えられる場合、「自治会が管理しているごみ集積所が利用できない場合は、ごみ処理施設に持ち込みください。」という返答があった場合は、市役所のウェブサイトの市長公室ページからEメールをして、状況を説明する。戸建住宅で構成されている地域にて、ごみ集積所にごみを置けない場合は戸別収集方式になるが、その市町村に前例がない場合は拒否することが考えられる。説得して、その市町村に前例を作る。
  • ごみ集積所が利用できない場合は、自治会に加入していない者同士で1つのグループになる方法がある。自治会の建物や公園にある自治会の案内板にて、加入していない者が分かることがある。
  • 自治会の建物がある敷地内にてごみ集積所がある場合は、自治会に加入していない者は、そのごみ集積所にごみを置くことはできない。
  • 戸建住宅で構成されている地域にて、ごみ集積所の為に自治会が私有地を借りている場合は、自治会に加入していない者は、そのごみ集積所にごみを置くことはできない。
  • 戸建住宅で構成されている地域にて、ごみ集積所に自治会費で購入したごみ集積庫がある場合は、自治会に加入していない者は、そのごみ集積庫を利用できない。この場合は、ごみ集積庫の前や横にごみを置くことになる。
  • ごみ集積所に置いてあるネットは、利用しても問題はないはず。ネットは市町村からの補助金で購入していて、つまりは税金で購入していることになる。また、無料でネットを配布している市役所もある。ただし自治会費でネットを購入している場合は、そのネットは利用できない。
  • ごみ集積所にごみを置くならば、そのごみ集積所の掃除当番は、自治会に加入していない者も参加する。
  • 家の前にごみ集積所を設置して1年経てば隣の家に移動する輪番制を採用している地域は、自治会に加入していない者も協力する。ごみ集積所を設置する場所は家の住民が決めるが、ごみ収集車両が容易に停車できる場所が良い。
    メモ 未開発の土地を開拓して住宅地を作る計画がある場合は、コンクリートブロックを利用する簡易なごみ集積所を設置しておくほうが良い。ごみ集積所がすぐ近くにある家は売れ難くなり、販売価格を下げることになるかもしれないが、他の家は売れやすくなるはず。獣がいる地域以外は、ごみ集積庫はいらない。
  • 集合住宅に住むことを考えている場合は、ごみ集積所が敷地内に設置してある物件のほうが良い。

その他の注意点

自治会に加入していない者は、他にも注意点がある。
  • 集合住宅の敷地内と私道で発生する経費=共益費は、支払いする。
  • 市町村が市民にお願いしている市内全域一斉清掃は、時間に余裕があれば参加する。参加する場合は、自治会の会長に知らせる必要はない。作業終了後に自治会が何かを配っている場合は、受け取らないこと。
  • 自治会が主催する行事と自治会が運営に関わっている行事は、子供も含めて足を踏み入れない。
  • 大災害時は、自治会には頼らない。公民館は、市民ならば利用できる。